ここで決着をつけるか。敗れて最終局にもつれ込むか。第49期囲碁名人戦七番勝負の第6局(主催・朝日新聞社、協力・ホテル三日月)。挑戦者の一力遼棋聖(27)は、勝負どころで肉を切らせて骨を断つ英断を下した。確かな読みに基づく度胸が勝負の流れを大きく引き寄せた。
挑戦者に悪手らしい悪手は見当たらず、相手の芝野虎丸名人(24)にもはっきりとした敗着が見えない。互いに秘術の限りを尽くした本局を、解説の河野臨九段は「掛け値なしの好局」とたたえた。数ある見どころの中から、もっとも劇的な応酬を紹介する。
実戦図1 中盤戦たけなわの盤上を俯瞰(ふかん)すれば、黒番の名人は右辺から中央にかけて巨大な模様を敷いている。これを大きくまとめて、各隅で陣地を稼ぐ白番の挑戦者に対抗しようというのだ。
やっかいなのは、左下に抱え…